経鼻弱毒生インフルエンザワクチン(フルミスト)について
2023年3月に経鼻弱毒生インフルエンザワクチン(商品名フルミスト点鼻液)が薬事承認され、2024/25シーズンから日本でも本格的に流通が始まりました。
アメリカでは2003年から、ヨーロッパでは2011年から認可・発売され、以来海外30以上の国と地域で承認されており、効果や安全性については実績が示されています。2歳以上19歳未満の方のみが接種できます。年齢に関わらず1回接種で、各鼻に0.1mlずつ噴霧します。一人1回8,000円で、供給が不安定のため、完全予約制です。
注射の不活化ワクチンとの比較
- 注射の不活化ワクチンでは、血液中の免疫であるIgG抗体を誘導し、ウイルスの体への侵入を防ぐのではなく、体内に侵入してきたウイルスが全身に広がるのを抑えます。すなわち、感染そのもを防ぐというより、重症化を防ぐ作用が主になります。一方、フルミストでは、IgG抗体に加えて、ウイルスの侵入門戸である鼻腔・気道粘膜に分泌型IgAを誘導し、感染を阻止、発病を抑えることができます。そのためより高い感染防御効果が期待できます。効果の持続も長く、注射ワクチンが4~6カ月に対し、約1年です。
- A型2株、B型1種類を含む3価の生ワクチンです。注射のワクチンはこれまでA型2株、B型2株の4価ワクチンでしたが、今シーズンから2020年以降流行のみられていないB型の山形系統は除かれ3価になります。
- 注射ワクチンは流行する型を予測して作られます。フルミストは細胞性免疫で免疫を高めることができるため、型の変化に強く、多少型が異なっても効果が期待されます。
- 鼻に噴霧するので痛みがありません。
副反応
- 鼻水、鼻づまりなど鼻炎症状、発熱、咳、喉の痛み、倦怠感など風邪症状。
- 重症喘息のある場合、発作を誘発する可能性があります。
- 他のワクチンと同様に、アレルギー反応として、蕁麻疹、アナフィラキシー、ショックなどを起こす可能性があります。
ワクチンが接種できない人
- 37.5℃以上の発熱。
- 急性疾患にかかっている-特に鼻汁、鼻閉がある場合は延期する。
- 喘息の治療を行っている。一年以内に喘息発作があった。
- 慢性疾患(心臓疾患、肝臓疾患、腎臓疾患、糖尿病、貧血、嚥下困難や呼吸障害を伴う神経疾患、免疫不全など)
- 本ワクチンに含まれる成分で、鶏卵、ゲンタマイシン、ゼラチン、アルギニンに対しアレルギーがある。
- 過去にインフルエンザワクチンの注射でショックなど重篤な副反応があった。
- 免疫機能の異常のある疾患、免疫抑制のきたす治療を受けている場合、川崎病や心疾患でアスピリン内服中の場合。
- 経口または注射の副腎皮質ホルモン剤を使用。
- 4週間以内に生ワクチンを接種した。
- 妊娠している、その可能性が高い。
フルミスト接種における注意事項
- 接種当日は過激な運動を避けて下さい。入浴は差し支えありません。
- 妊娠の可能な方は、接種後2カ月間は妊娠をしないように注意しましょう。
- 接種後1~2週間は鼻汁中にワクチンウイルスが排出されるため、重度の免疫不全の方との接触を控えましょう。
- フルミストを接種した後2週間程度は、インフルエンザ検査で陽性になる可能性があります。また、この時に抗インフルエンザ薬の治療を行うと、フルミストによる接種効果は減弱してしまう可能性があります。周囲でインフルエンザが流行している、家族内にインフルエンザ感染者がいる場合は、感染なのか、ワクチン副反応か判断が難しくなってしまいます。このため、周囲に感染者がおらず、なるべく流行する前の時期に接種することが勧められます。
- 注射ワクチンを打つと腫れやすい方や、注射が極端に苦手なお子様はご検討下さい。
- 5歳未満で喘息の既往がある場合、注射ワクチンをお勧めします。
- 他の生ワクチン(麻疹風疹、水痘、おたふくワクチン)の接種からは、前後4週間あける必要があるのでご注意ください。他の生ワクチンと同時接種を行うことは可能です。
- 添付文書上は2歳以上から19歳未満が接種できますが、点鼻なので顔を動かしてしまうとうまくできないため、じっとしていられるお子様が対象です。動いてしまったりしてうまくできなくても、やり直しはできません。
- 鼻風邪やアレルギー性鼻炎などで鼻づまりや大量の鼻水がある場合は、症状が治るまで接種を延期するか、従来の皮下注射のワクチンを接種した方がよいでしょう。非常に鼻汁がたまっている方などは、投与前に鼻をかんでもらった方がよいかもしれません。接種後、くしゃみをしたり、鼻をかんだり、鼻や喉に滴り落ちたり、飲み込んだりしても、インフルエンザから身を守るのに十分有効であると報告されています。
- フルミストの接種を選択された場合は、注射ワクチンの投与はできません。